M&A基礎知識

M&A仲介会社とプラットフォームはどっちが得?手数料と向き不向きを比較

仲介会社とマッチングプラットフォームは、費用の決まり方も、交渉を誰が担うかも違います。譲渡額の規模と、自分でどこまで手を動かせるかという2つの軸で、どちらの構造が自社に合うかを整理します。

公開 更新 カテゴリ M&A基礎知識 読了目安 約8分

編集 M&A攻略ガイド編集部

M&A仲介会社とプラットフォームはどっちが得?手数料と向き不向きを比較について、契約・財務・業務資料を確認する経営者と担当者
準備から契約までM&Aの手順を並べた編集イラスト

この記事の前提

想定読者
中小企業の経営者・後継者など、M&Aや事業承継を検討している方
読了後の状態
この記事のテーマについて、自社の状況に当てはめて判断できる状態

「会社の売却(または買収)を考えているけれど、M&A仲介会社とマッチングサイト(プラットフォーム)、結局どちらを使うべきなの?」

M&Aを検討し始めたとき、最初に迷うのがこの入口の選択です。

切り分けの形だけ先に言えば、費用を抑えて自分で動けるなら「プラットフォーム」、交渉と実務を任せる必要があるなら「仲介会社」になります。ただしこの線引きは、譲渡額の大きさと、経営者自身がどこまで手を動かせるかで動きます。金額だけで決めると、最低報酬に手取りを削られたり、逆に一人では抱えきれない交渉を背負い込んだりします。

この記事では、両者の違いを費用の決まり方・進み方・カバーされる範囲で整理し、自社がどちらの構造に合うのかを判断できる形にまとめます。


M&A仲介会社とプラットフォームの決定的な違い

まずは、それぞれの仕組みの根本的な違いを理解しておきましょう。

1. M&A仲介会社(アドバイザリー)

専任の担当者(アドバイザー)が付き、相手先の探索から交渉、契約書の作成、クロージングまでを「代行・サポート」してくれるサービスです。不動産で言えば、仲介業者に間に入ってもらうイメージです。

  • 担い手の幅: 全国規模で案件を扱う仲介専業の会社から、特定の地域や業種に絞ったブティック型の小規模事務所まであります。規模によって、抱えている買い手候補の数も、最低報酬の水準も変わります。

2. M&Aプラットフォーム(マッチングサイト)

インターネット上の「掲示板」のようなもので、売り手と買い手が「直接やり取り」を行うサービスです。システム上で案件を検索し、チャット機能を使って交渉を進めます。不動産で言えば、物件検索サイトを自分で見て回るイメージです(ただし、交渉も自分で行う)。

  • 担い手の幅: 事業承継全般を広く扱う大手のマッチングプラットフォームのほか、WebサイトやECサイトなど特定の資産に特化したサービスもあります。扱う案件の種類が違うため、自社の業種が載っているかを先に確認します。

【徹底比較】仲介会社 vs プラットフォーム

実際に利用する上で気になるポイントを、判断軸ごとに並べます。

判断軸 M&Aプラットフォーム M&A仲介会社
費用の決まり方 成約額に対する料率が中心。相手探しの人件費を負担していないぶん、料率自体も低めに設定されやすい 成約額に応じた料率(レーマン方式)に加え、着手金や中間金が発生する場合がある
最低報酬の有無 設定がないか、あっても小さい 最低報酬額が設定されていることがあり、譲渡額が小さいほど実質的な負担率が上がる
想定される案件規模 個人事業・小規模事業から中小企業まで 一定以上の譲渡規模がないと引き受けが難しい
話が動き出す速さ 気になった相手にその場で連絡できるため早い 間に担当者が入るぶん往復が増える。そのかわり感情的な対立になりにくい
カバーされる範囲 相手探しの場の提供が基本。契約書作成や株価算定はオプションか外部依頼 探索から契約、クロージングまで一括
交渉の相手 買い手本人と直接やり取りする アドバイザーを介して条件を詰める
見られる案件 掲載されている案件を自分で検索できる 非公開案件が中心で、提示を受ける形になる

① 費用は「料率」ではなく「最低報酬」で効いてくる

費用の差として大きいのは、料率よりも最低報酬(ミニマムチャージ)です。成功報酬に最低報酬額が設定されている場合、譲渡額が小さいほど、実質的な負担率は跳ね上がります。

  • 仲介会社の場合: 料率だけを見れば数%の差でも、最低報酬が設定されていれば、譲渡額が小さい案件では手取りのほとんどが手数料に消えることがあります。
  • プラットフォームの場合: 最低報酬を置かないか、置いても小さく設定されているため、譲渡額に比例した負担で収まりやすくなります。

見積もりで確認するのは次の3つです。着手金・中間金が発生するか、成功報酬の料率がどの金額帯で切り替わるか、最低報酬額はいくらか。この3つが分かれば、想定している譲渡額での手残りを自分で試算できます。料率だけを聞いて比べると、最低報酬に足をすくわれます。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」(最低手数料を設定する仲介者・FAが多いことから、ガイドラインにレーマン方式と最低手数料を併記し、最低手数料の分布や適用事例を紹介したと説明されています) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html

料率の決まり方そのものはM&Aの手数料・費用相場とレーマン方式の仕組みで整理しています。

② 交渉スピードの比較

プラットフォームは、気になった相手にその場でメッセージを送れるため、話が動き出すのは早くなります。一方、仲介会社は間に人が入るため連絡の往復に時間がかかりがちですが、その分「感情的な対立」を防ぎ、冷静に交渉を進められる面があります。

早さは、そのまま有利さにはなりません。直接やり取りするということは、相手からの値下げ要求にも自分で即答することになる、という意味でもあります。


どちらが向くかは、規模と手の動かし方で決まる

では、自社はどちらの構造に合うのか。金額の線引きではなく、条件で整理します。

プラットフォームが向くのは、こういう条件のとき

  • 想定している譲渡額が、仲介会社の最低報酬と比べて小さい — 最低報酬が手取りを削る比率が大きくなるため、料率で比較する意味がなくなります。
  • 自社の魅力を、自分の言葉で説明できる — 案件概要の作成も、質問への回答も基本は本人が行います。
  • メッセージのやり取りや資料の授受を自分で回せる — 買い手候補が複数付くと、並行して対応する作業が発生します。
  • 交渉に時間を取られても事業が回る — 社長が動く時間を、そのまま持ち出すことになります。

【ポイント】 プラットフォームの中には、契約書の作成や株価算定だけを外部の専門家に依頼できるオプションを用意しているものがあります。相手探しは自分で行い、間違えると金額に直結する工程だけ外に出す使い方です。どこまでが標準機能で、どこからが別料金かは登録前に確認してください。この分担の考え方は交渉と契約だけ外部に頼む方法にまとめています。

仲介会社が向くのは、こういう条件のとき

  • 譲渡規模が大きく、最低報酬が相対的に軽い — 負担率が下がるため、費用の差より支援の厚さが効いてきます。
  • 整理すべき論点が多い — 株主が分散している、簿外債務の懸念がある、許認可の引き継ぎが絡むといった場合、順序を組み立てる作業が必要になります。
  • 交渉の窓口を自分で持てない — 本業に手一杯の状態で買い手と直接やり取りすると、どちらかが止まります。
  • 対面での説明を前提に進めたい — 資料の読み合わせや、金融機関を交えた調整が必要な場合です。

【ポイント】 規模が大きい案件ほど、法務・税務の論点も増えます。その整理の手間を自分で負うか、費用を払って外に出すかの選択だと考えると、判断しやすくなります。

M&AプラットフォームとM&A仲介会社を手数料、対象規模、速度、サポート、交渉方法、案件数で比較した表

決める前に、自社が置かれている価格帯を確かめる

「自分の会社が、仲介会社に依頼するほどの規模なのか分からない」という状態のままでは、どちらも選べません。先に確かめるのは、自社と近い業種・規模の案件が、どんな条件で出ているかです。

マッチングプラットフォームの多くは、登録して掲載案件を見る段階では費用が発生せず、成約時にはじめて費用がかかる設計になっています(発生の条件はサービスごとに違うため、登録前に規約で確認してください)。交渉に入る前に、相場観だけを取りに行くことができます。

出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(第1章Ⅲ3に、譲り渡し側についてはマッチングに関し一切の手数料が発生しないケースが多く、譲り受け側についてはマッチング後のクロージング時点で成功報酬が発生する形が多い、と記載されています) https://www.meti.go.jp/files/900016275.pdf

掲載案件を見るときに、どこを見るか

  • 売上・利益と提示価格の関係 — 自社の数字を当てはめると、どのあたりの価格帯に入るかの見当がつきます。
  • 譲渡理由の書き方 — 後継者不在なのか、事業の選択と集中なのかで、買い手の集まり方が変わります。
  • 掲載されている期間 — 長く残っている案件は、条件が市場とずれている可能性があります。
  • 買い手が前提としている条件 — 引き継ぎ期間の長さや、社長の残留を求めているかどうか。ここが合わないと、価格が合っても進みません。

見ているうちに、自社の情報をどう書けば伝わるかも見えてきます。案件概要の書き方はノンネームシートの書き方を参照してください。


次にやること

どちらを使うかを決める前に、次の2つを手元で済ませておくと、比較の基準ができます。

  1. 想定している譲渡額を、根拠つきで試算する — 時価純資産と実質利益から目安を出す方法は会社の値段(企業価値)の計算方法で整理しています。この金額がないと、最低報酬が重いのかどうかを判断できません。
  2. 依頼先の候補に、費用の発生時点を書面で出してもらう — 着手金・中間金・成功報酬・最低報酬の4つを、金額と発生条件の形で確認します。口頭の説明だけで進めると、後から追加費用の話になりやすくなります。

出典:中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録支援機関データベース(登録された支援機関を、最低手数料の金額、成功報酬の有無、着手金無し・中間金無しといった条件で検索できる) https://ma-shienkikan.go.jp/search

この2つが揃えば、仲介会社に払う費用が自社の譲渡額に見合うかを自分で検算できます。見合わないと分かった時点で、相手探しは自分で行い、実務だけを外部に頼む形へ切り替える判断もできます。

M&Aは相手があってのものです。入口を1つに絞らず、まず案件が集まっている場所で市場の条件を確認してから、どこまでを外部に出すかを決めてください。全体の工程と所要時間の目安はM&Aの流れと期間にまとめています。