「会社を売りたいが、仲介会社の手数料が高すぎて手残りがほとんどない」 「最低報酬2,000万円と言われた。売却額と釣り合わない」
中小企業のM&Aにおいて、多くの経営者がこの「手数料の壁」にぶつかります。汗水垂らして育てた会社の売却益を、仲介会社に半分以上持っていかれるのは納得がいかないでしょう。
そこで近年急増しているのが、M&Aプラットフォーム(マッチングサイト)を使って「自分で買い手を探す」という方法です。これなら仲介手数料はかかりません。 しかし、ここに落とし穴があります。相手は見つかっても、「価格交渉」「デューデリジェンス対応」「契約書の作成」という、最も危険で専門知識が必要なフェーズを、素人が一人で乗り切るのは不可能に近いのです。
実は、「相手探しは自分で行い、実務の肝となる部分だけ専門家(アドバイザー)に依頼する」という方法が、コストを最小限に抑えつつ、安全にM&Aを成功させる「裏ワザ」であることをご存知でしょうか?
本記事では、認定経営革新等支援機関の視点から、この「手数料削減+専門家活用」の賢い進め方について解説します。
1. なぜM&A仲介会社の手数料はあんなに高いのか?
一般的なM&A仲介会社の手数料体系は「レーマン方式」と呼ばれますが、中小企業にとって問題なのは料率よりも「最低報酬(ミニマムフィー)」です。
- 大手・中堅仲介会社:最低報酬 2,000万円〜
- 小規模ブティック:最低報酬 500万円〜
例えば、あなたの会社が「5,000万円」で売れるとします。もし最低報酬が2,000万円なら、手元に残るのは3,000万円(税引前)。売却額の40%が手数料に消える計算です。
仲介会社が高い理由は、主に「買い手を見つけてくる(マッチング)」ための人件費や広告宣伝費が膨大だからです。逆に言えば、「買い手を自分で見つける」ことができれば、このコストを払う必要はなくなります。
2. 「直接交渉(DIY M&A)」に潜む3つの致命的リスク
「BATONZ(バトンズ)」や「TRANBI(トランビ)」などのM&Aプラットフォームを使えば、買い手候補と出会うこと自体は難しくありません。 しかし、「マッチング=成約」ではありません。 むしろ、マッチングした後からが地獄の始まりです。専門家をつけずに直接交渉する場合、以下のリスクに直面します。
リスク①:海千山千の買い手に「安く買い叩かれる」
プラットフォームには、M&A慣れした買い手企業や投資家がたくさんいます。彼らは素人の売り手を見つけると、あの手この手で価格を下げに来ます。
- 「御社のこの在庫は評価できないのでゼロ円です」
- 「将来のリスクを考慮して、買収価格を3割下げます」 専門知識がないと、それが正当な主張なのか単なる言いがかりなのか判断できず、「向こうの言う通りにするしかない」状況に追い込まれます。結果、相場より遥かに安い金額で手放すことになります。
リスク②:デューデリジェンス(買収監査)で立ち往生する
基本合意後、買い手から「過去3期分の全仕訳データ」「契約書全件」「人事労務の記録」など、膨大な資料請求(デューデリジェンス)が来ます。 「何を出して良くて、何を出してはいけないのか」の判断がつかず、機密情報を無防備に渡してしまったり、逆に対応しきれず破談になったりするケースが後を絶ちません。
リスク③:契約書(SPA)に「毒」を盛られる
これが最も恐ろしい点です。買い手側が用意した「株式譲渡契約書」には、買い手に有利な条項(罠)が仕込まれていることがよくあります。
- 過度な表明保証:「過去に遡って一切の法違反がないことを保証する(違反したら賠償)」
- 補償期間の長期化:「売却後5年間は何かあったら売り手が責任を取る」 これらに気づかずサインしてしまうと、会社を売った後に数千万円の損害賠償を請求され、売却益が吹き飛ぶことさえあります。
3. 正解は「スポット支援(FA)」を活用すること
「仲介手数料は払いたくない」が「リスクも負いたくない」。 このジレンマを解決するのが、アドバイザーの「スポット活用」です。
仲介会社のように「最初から最後まで丸投げ(手数料数千万)」ではなく、あなたが自分では対応できない「交渉・監査・契約」のフェーズだけ、専門家を横に座らせるのです。
この方法のメリット
- 手数料が劇的に安い マッチング(相手探し)のコストがかかっていないため、一般的な仲介手数料の数分の一、あるいは月額顧問料+成果報酬など、リーズナブルな体系で依頼できます。
- 「売り手の味方」として交渉してくれる 仲介会社は「中立」なので、売り手の利益だけを守ってはくれません(成約させるために妥協を迫られることもあります)。しかし、あなたが雇ったアドバイザー(FA)は100%あなたの味方です。買い手の理不尽な値下げ要求を論理的に跳ね除けます。
- M&A後のトラブルを防げる 契約書の条項をプロがチェックし、「ここ修正しないと将来訴えられますよ」と指摘・修正を行います。
4. 当事務所が提供できる「M&A実務支援サービス」
私は「認定経営革新等支援機関」として、中小企業のM&A実務をサポートしています。 大手仲介会社が扱わない小規模案件や、赤字再生案件、そして「自分で相手を見つけたけれど、どう進めていいか分からない」という経営者様からのご相談を数多く受けています。
具体的なサポート内容
- 企業価値算定(バリュエーション) 「あなたの会社はいくらが妥当か」を客観的に算出し、買い手への提示価格の根拠を作ります。
- 条件交渉の助言・同席 買い手からの値下げ要求や条件変更に対し、専門的な見地から反論・交渉のアドバイスを行います。
- デューデリジェンス対応支援 買い手からの膨大な資料請求に対し、提出資料の整備やQ&A対応をサポートし、スムーズな進行を図ります。
- 契約書(基本合意・最終契約)のチェック ビジネス条件の観点から不利な条項がないかを確認し、必要に応じて弁護士等の専門家と連携して修正案を作成します。
私に依頼するメリット
私は単なる認定支援機関ではなく、自らも事業を営む経営者です。「会社を手放す社長の気持ち」や「経営の現場」を理解した上で、机上の空論ではない、実利のあるサポートをお約束します。
5. まとめ:コストは削っても、安心は削るな
M&Aは、経営者人生の最後の通信簿とも言える一大イベントです。 仲介手数料を節約しようとして、結果的に安く買い叩かれたり、売却後に訴訟トラブルに巻き込まれては本末転倒です。
「相手はネットで見つけた。でも、交渉の席にはプロを連れて行く」
これが、賢い経営者が選ぶ、新しいM&Aの形です。 「すでに買い手候補がいる」「マッチングサイトを使ってみようと思っている」という方は、本格的な交渉が始まる前に、ぜひ一度ご相談ください。転ばぬ先の杖として、あなたの利益を最大化するお手伝いをいたします。
お問い合わせ
「マッチングサイト経由の交渉サポート」「セカンドオピニオン」のご相談を受け付けています。 現在の状況(相手が見つかっているか、交渉の段階など)を簡単にお知らせいただければ、最適なサポートプランをご提案します。

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